素晴らしき世界

いつからかこの世界迷い込んだ

『上を下へのジレッタ』考察

考察とも言えない雑多にも程があるものですが、暇つぶしになれば。

内容にがっつり触れていること、また、原作未読でありますので悪しからず。

 

 

 

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・ラストシーンについて

そもそもあのラストシーンはかなり抽象的で、彼らがどうなったか具体的なことは一切語られていない。

私はあのラストを見て、妄想の中で全員死んだ気がした。

あの場面で真っ先に思い出したのが「脳が夢の中の出来事でも死んだと思ったら現実にも死んでしまう」という話。門前はただ一人そこが虚構の世界だとわかっていても覚醒した山辺の能力が強すぎて現実に戻れないまま…みたいな。

というか、山辺の覚悟というのか意思というのか能力というのか、を甘く? 軽く? 見た門前の負けじゃないかな。山辺は事前に「きみちゃんのいない世界なんてぶっ壊れれば良い」って言ってるんだから。眠れと念じただけで空港中の人間を眠らせることができるまでの能力になってたんだから。

結局門前市郎は己の驕りに殺されたんじゃないかなあ。

山辺はきみちゃんが迎えに来てくれて、二人で歩いて行ったけど、門前は最後まで叫びながら抵抗しながら最後は担ぎ上げられて、さながら地獄の使者に運ばれていくようだった。

ただ、何故かラストシーンを見終わった直後、その後山辺が何事もなかったかのように目を覚ますんじゃないかと一瞬思うタイミングがあった。なんでだろう。

 

 

・リエという女性

間リエという女性について、真っ先に感じたのは本当に門前と似た女だったんだな、ということ。結局彼女もまた自分のためにしか動いていない。

というか最早女版門前だったのでは。だから門前に凄いところがあることは誰よりも理解できている、けど足りないピースを埋めることはお互いにできない。二人は噛み合うピースではなくて形が同じピースだから。

門前は確かリエに「足りない最後のピースはお前だ」的なこと言ってたけど違うと思った。多分根本的に違う…傷の舐め合いであって補い合いではなかったと思う。

門前は全体を通して子供っぽいけど、リエもそうだった。

月を地球にぶつけるジレッタを「絶対に止める」と言っていたけど、本当に止めたいのなら山辺だけじゃなくてきみちゃんにも協力を仰ぐべきだった。なのに自身の嫉妬心を最優先したからあの結果に。

己の才能を信じていた門前に対して、リエは己の美貌を信じてたのかな。

だからこそ協力しなきゃいけないあの場で、本来の顔がああなきみちゃんに面と向かって「ブス」って言えて、喧嘩できた。それってまるっきり子供の言動では…。

まあきみちゃんがそこまで重要だとは思ってなかったのかもしれないけど、でもわざわざ二人の目の前に出てきて平然と「貴女は邪魔」とか言ってのけるのがなぁ…。

 

・門前とジレッタ

前記事の「感想」にて

全部知ってるリエに「君には俺が必要なんだ」とか言えるんだからなるほど門前市郎自身が虚構だわ

と書きましたが、そこから派生したもの。

ジレッタを生み出してたのは山辺だけどもしかしてジレッタの体現者は門前…?

きみちゃんを喪った山辺が「(ジレッタも現実世界も)どうでもいい、もう要らない」と心の底から思ったから門前は消えるしかなかったとか。

万が一ラストシーンの後も山辺が生きていたとしても、もう山辺はジレッタを使うことは生涯なさそうなのでやっぱりどう足掻いても門前は死ぬ。

というよりも、もしもジレッタが無い世界があったとしたら、山辺ときみちゃんは多分、貧乏だけど平凡に幸せに生きた未来もあったと思う。でも門前はどう足掻いても何をどうしても破滅する未来しか見えない。ジレッタがなくても死にそう。彼の運命は、経過はどうあれ必ず破滅で終わりそう。

もしあのラストシーンの後、何事もなかったかのように山辺は目を覚ますけど、ジレッタという能力もそれに伴う記憶も全部無くなってて、ただ門前市郎という人間だけが消えてて、でもそれすら誰も覚えてないとかだったらもうめっちゃ怖い。

門前市郎はあの世界に本当に実在したの…?

そして上記した「欠けたピース」の話。

門前が探してた欠けたピース、結局話の中で一度たりとも出てこなかった。それを探す物語でもあったはずなのに、影も形も出てこなかった。

だからこそのジレッタだったのかな。水や煙みたいに形がないからこそどんな形にもなる。見てくれだけでも欠けた場所を埋めてくれる。

でも所詮は見てくれでしかないからそれでどうにか体裁整えようとした結果耐え切れずに自壊するという。

一番上にも書きましたが、私はあのラストシーン、門前市郎という人間の盛大な自滅に思えてならない。

あと、前に「悪役は食事をしない」というのをどこかで見たけど、門前もリエも、食事シーンどころか自身の食事の話すらなかった。一方の山辺ときみちゃんは門前の言う通り「顔を合わせたら毎回食事の話をしている」し、きみちゃんは実際にチーズを齧るシーンもあった。

それに合わせて考えると舞台『上を下へのジレッタ』では門前とリエが悪役で、山辺ときみちゃんが善役だったんだろうか。

 

いずれにせよ門前は最初から最後(最期?)まで孤独だったんだろうなあ。

 

 

あーーーーーーーーもっかい見たい。